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Date INSTRUCTOR INTERVIEW

時間と手間をかけて直せば
愛着たっぷりの器が暮らしに

2018.08.24 竹原幸枝 | 漆・造形作家

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デイト ワークショップスタジオで金継ぎを担当する竹原幸枝さん。奥深い漆工芸の世界や金継ぎが自分でできる暮らしの魅力について伺いました。

直感に導かれ 漆の世界へ

小さいころから絵を描くことも、工作することも好きでした。好きなことを大学でも続けたかったので美大に進学。大学では1年次は専攻を決めずにさまざまなジャンルの表現技法や考えかたを学び、2年次から自分の決めた専攻に進むことになっていて、わたしは直感的に漆を専攻することに決めました。不思議と迷いませんでした。もともと、手先を動かしてものを作ることに興味があったし、工芸の中でもちょっとマイナーだと思われている(笑)漆がわたしにはしっくりときて。昔から王道よりもちょっと脇道にあるような立ち位置のものになぜだか心が惹かれるんです。3年間漆を学び、卒業後、助手や非常勤助教として大学で働いたあと、「広島アートプロジェクト」に参加しました。これが楽しくて。現代美術のアートプロジェクトだったこともあり、その頃には漆ではなく、人工樹脂を使った作品や、絵を描くことが中心になっていきました。

生活の中にある手仕事文化

この頃から海外での制作にも力を入れ始め、ドイツ、ポーランド、上海などでの滞在制作や、展示会にも積極的に参加しました。ポルトガルでは現地のアート専門学校に2年間在籍しながら絵を描いていました。ポルトガルでとくに心惹かれたのは昔ながらの手工芸が生活の中で息づいていることです。たとえばわたしが滞在していたカルダス・ダ・ライーニャには陶器の工房があって、普段使いのお皿やカラフルなタイルをたくさん作っていました。ポルトガルは陶器が有名なのでそれを観光客がお土産に買うことももちろんあるのですが、現地のひとも同じ陶器を生活の中で使うんです。その感じがいいなと思って。じゃあ、それって日本だったら何にあたるんだろうと考えたときに、真っ先に思い浮かんだのが漆でした。「やっぱり好きだ」と思える漆をもう一度やってみよう。そう決意し、日本に帰国してからまた本格的に漆の作品を制作するようになりました。

漆のマルチな魅力

漆の魅力はたくさんあるのですが、ひとつはいろんな顏を持っているところ。一般によくイメージされる黒や朱色の漆は塗料として使われる漆。でもその他にも接着剤としての漆や、表面の質感を出すニスのような役割を担う漆もあります。これらの特徴を踏まえ、応用したり組み合わせたりしながら、いろんな使いかたができるのが漆の世界の奥深いところです。たとえば漆を接着剤として卵の殻をモザイクのように貼る装飾技法があります。これは伝統的な技法で、昔の屏風などにも使われていました。漆はそのまま塗ると飴色。白の顔料を入れたとしても濁りのない真っ白さは出せないので代わりに卵の殻を使ったと言われています。これも何の卵を使うのか、卵をどれくらい細かく割るかで質感や表情が一変します。ほかにはタンパク質を漆に混ぜることで凹凸を使った表現ができるようになります。漆に卵や豆腐を入れるとパテのようになるんです。これを作品の表面に塗ってそれをひっかいて模様をつくります。その上から漆を重ねてさらに研ぐとまた違った味わいの質感に。いろんな技法を試行錯誤しながら、表現を模索する過程にも漆の魅力が詰まっています。

全5回で本格的な金継ぎを

このような漆のマルチな特徴を集結した総力戦ともいえるのが金継ぎです。最近は金継ぎが一般的に知られるようになってきたこともあり、樹脂を使った金継ぎの簡易キットで金継ぎをされるかたもいらっしゃいますが、わたしのワークショップでは本格的に漆を使った金継ぎを教えます。漆でやると時間がかかります。デイトのワークショップでは全5回をかけて完成させます。金継ぎはまず欠けた器を麦漆(むぎうるし)という強力な接着剤で結合するところから始めます。これを1週間以上乾かしてから、錆漆(さびうるし)で下地をつくります。これは欠損箇所を埋める作業です。最終的には元の器の形となるように研いでいくので、この時点では「盛って」埋めます。続いて下地の上に黒の漆を塗り重ねていき、最後に上から金や銀を重ねます。これは蒔絵(まきえ)という技法の一種で、色を入れたい部分に薄く漆を塗って、それが乾かないうちに上から細かい金や銀の粉をかけると漆の塗ってあった部分だけに色が残る、という寸法です。これを乾かして完成です。基本的な流れはこのような感じですが、陶器の破損状態によってそれぞれスケジュールを組み、ひとりひとりに合ったペースで進めていきます。

手間と時間は「愛着」に変わる

金継ぎには時間と手間をかけるという良さがあります。手間をかけたぶんだけ愛着がわきます。その器をすごく大切にしたくなります。ワークショップ参加者の中には息子さんが修学旅行でつくった器を金継ぎされたかたもいらっしゃいました。自分にとって大切な器を自分の手で手間ひまかけて直す。唯一無二の器、過ごした時間、そんな豊かさをぜひ金継ぎを通して知っていただきたいです。また、気持ちの面だけではなく、実際に丁寧に時間をかけてやったぶんだけの結果が最終的な仕上がりに出ます。とくに差が出るのが「研ぎ」。どこまでの細かさで研ぐのがいいのか、どれくらいの力をかけて、いつまでやればいいのか。研ぐ感覚はひとそれぞれ。そのベストな感覚をつかめるよう、アドバイスしていきます。この感覚をつかむためには実践が大事。仕上がりの決め手になる部分であると同時に、とくに独学では習得が難しいところなので、ワークショップでしっかり自分のものにしてください。

自分で直して使い続ける豊かさを

お気に入りのものを長く使っていくコツは、気に入ったものしか買わないことです。適当に買うくらいなら無くてもいい。そんな風に考えると、持ちものは好きなものだけになるので、その全部をずっと大切にできます。モノが少なくて済むのもいいですよね。モノが多いとがんばらなきゃいけない。捨てることもストレスになる。本当に好きなものだけを持つことが、より気持ちよく暮らすヒントになるのではないでしょうか。でもどんなに大切なものでも壊れてしまうことはある。そんなとき金継ぎができたら自分で直せます。自分で直せるから割れるのが怖くて器を使えないというストレスからも解放されます。割れたらやっぱり悲しい気持ちになるけれど、金継ぎができればそこから「これを金継ぎでどういうデザインにしようかな」と次のステップを考えられる。壊れたものを直すことは失うことから創造すること。「自分で直す」を気負わず自然と実践できる、そんな暮らしの豊かさを金継ぎという手仕事を通して発見してもらえたらと思っています。

 

 

Profile
竹原幸枝 | 漆・造形作家

日々のくらしを豊かにする、こころによりそったモノをお届けしたい。そんな想いを大切にしながら「serafeee」として漆や立体作品を制作。ずっと大切に使っていきたい器などを「自分の手」で直したい、そんな気持ちを大切に、ひとりひとりにあったペースで進め、新たな作品として生まれ変わるお手伝いをしていきます。
http://serafeee.blogspot.com/
Instagram:@serasera04

 

金継ぎ「tsutsu」
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