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Date INSTRUCTOR INTERVIEW

思い出も一緒に束ねる
花とともにある暮らし

2018.11.21 原田美貴 | SHAMROCK オーナー

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デイト ワークショップスタジオで「フラワーアレンジメント」を担当する原田美貴さん。気取らず、気軽に飾る。記念日にも、なんでもない日にも、贈り合う。そんな花と花のある暮らしの魅力からブーケづくりのコツまでたっぷりお伺いしました。

「かっこいい」花屋に憧れる

子どもの頃から漠然と、自分でお店をもちたいと思っていました。花屋がいいなと思ったきっかけのひとつは、家族でよく行くお好み焼き屋への道すがらにあった花屋がかっこよかったから。なぜかアヒルがいて、水槽に熱帯魚もいるような独特の雰囲気が魅力的な花屋で、いつも気になってのぞき込んでいました。残念ながらその花屋、今はもうなくなっちゃったんですけどね。もうひとつは花に身近な家庭で育ったこと。たとえばクリスマスにはイミテーションのツリーじゃなくて、ゴムの木を用意するような家でした。子ども部屋には観葉植物があって、お正月には花屋さんが花を生けにくる、そんな環境で育ったので、自然と植物に親しみをもつようになりました。

花って、造形なんだ

20歳の頃、アルバイトの募集広告をみて、地元広島の花屋さんの門を叩きました。その時に初めて仕事として花と向き合うようになり、花をそれまでよりもっと身近な存在に感じるようになりました。花を詳細に観察しはじめると、それまで「引き」で見ていた花が、ぐっとクローズアップされるように。花びら、おしべ、めしべ…それぞれがどんな形でどんなたたずまいか。見るだけでなく、触ることでわかる花のここちよさ、葉っぱの巧妙なデザインなど、観察をすればするほど「花って、造形なんだ」と思うようになりました。その発見は、わたしをワクワクさせてやまない大きな衝撃でした。

見つける楽しさ、魅せる面白さ

花市場に行くようになってからは、市場にある見たことのない花々に魅了されました。とにかくおもしろくて夢中になってしまい、ついには市場でみつけた好きな花をお店の一角に通称「原田セレクション」として置かせてもらうように(笑)これをきっかけにお店の見せかた、ディスプレイの世界の面白さにも開眼。もともと習いごとなど、なかなか続かない性分なのに、花についてはまったく飽きることがないので、「わたしにはこれなんだ」と道を示されたような気がしました。

花に導かれベルギー、東京へ

花屋の仕事がどんどん楽しくなってきた一方で、本格的にフラワーデザインを学んでいない自分に心もとなさを感じ、NFD(日本フラワーデザイナー協会)で体系的にフラワーデザインを勉強し、資格を取りました。さらには草月流で華道も学びました。NFDで紹介されて世界的フラワーアーティストのダニエル・オストをお手伝いしに、ベルギーまで行ったのもこの頃です。そして、さらに自信をつけたいと向かったのは東京。働く店のアテはなく、都内の花屋を見てまわって、ここだと思った店にはそのまま入っていって、雇ってもらえないかと突撃交渉して。わたし、電話が怖いんですよね。自信がないから。いきなり会ってしまったほうがまだ気が楽だろうと(笑)そんなこんなで雇ってもらった店で多くの経験を積みました。

お客さんと一緒につくる花束

当時代官山にあった「Matilda」という店ではチーフデザイナーまでやらせてもらいました。仕事は主にディスプレイデザイン。会社の受付の生けこみや、パーティや展示会をよく任されました。まずはお客さんの希望やイメージを聞いて、どんな花器にして、どんな花にして…というのを考えます。「この中から選んでください」とこちらからイメージを提示するのではなく、お客さんの中にあるイメージに合わせて提案していく。お客さんと一緒に作り上げるという感覚を大切にしていました。その想いは「SHAMROCK」にも受け継がれています。4年間の東京修行から広島へ帰ってきて開店した小さな花屋「SHAMROCK」は、つくりおきをせず、お客さんとオーダーメイドで「一緒につくる」店です。

人生の節目に寄り添う花

「SHAMROCK」で一番多いのはお誕生日プレゼント用のブーケのご依頼。注文のためにご来店いただいたお客様にはまずいろいろ質問させていただきます。ブーケを贈る相手がどんなかたなのか、普段どんな色の服を着ているのか、何が好きなのか…。お聞きした内容から、贈る相手に最適なブーケをデザイン、後日お渡しします。考えてみると、花を贈るってすごいことですよね。人間以外に花を贈り合う生き物っていないと思うんです。誕生日に限らず、花が添えられるのは人生の節目であることが多い。その節目のひとつひとつに大切なドラマがある。そのドラマに少しでも関われる花屋の仕事はなんて幸せな仕事なんだろうとつくづく思います。

手順がわかるから自分でできる

デイトのワークショップでは、基本的なところから手順をしっかり追えるようにお伝えしていますので、初心者のかたも安心してご参加ください。ワークショップでは、まず私がつくったブーケやスワッグなどの完成品をお見せします。次にこれをバラして、再びわたしがつくりあげます。わたしの手元を観察して、手順の流れを理解すると完成までのイメージがつかめるので、あとは自分でつくるだけ。同じものをみて、同じ材料でつくっても、ひとりひとりに違いが出るのがフラワーデザインの面白いところ。不思議とそのひとらしいものが仕上がります。ちょっとしたコツをつかむだけでぐっと素敵な表情の作品になりますよ。たとえば花の「顔」の向き。花の正面を顏にたとえれば、全員が目線をはずすようにしてあげると自然な雰囲気でまとまります。

生存することだけを考えている花に救われる

私は花に救われるんです。大げさに聞こえるかもしれませんが、ワークショップの参加者のかたにとっても花と向き合うひとときが、少しでも救いになればと願っています。花はただ生きることだけ「考えて」います。植物が「考える」だなんて、と思うかもしれませんが(笑)でもたとえば、ユーカリはコアラに食べられないように毒を持つようになったと言われているけれど、同時にコアラはその毒を食べても問題ない体に進化していく。今この時間もユーカリとコアラの進化の戦いは続いているわけです。そんなことを考えると、植物に知性があるんじゃないかと思えてきて、考えれば考えるほど面白くて仕方がありません。花は生きることだけを考えている。それってすごくかっこいい。ただただ生きている。その姿がかっこいいということに救われるんです。

花がそばにいてくれる毎日を

だからこそ、ワークショップの時間だけでなく、日常的に花と付き合う時間をもっていただきたい。そんな想いから、毎日の花のある暮らしがもっと気軽に、楽しくなるアイデアもワークショップでお伝えしています。たとえば、花の高低差を変えるだけで、ぐっと立体的に見えてくるとか。ちょっとしたコツを知っているだけで、花を活けることが楽しくなる。楽しいから続けられる。続けられるから、花のある生活の喜びを実感できる。帰宅して帰ってきて玄関に花があるとテンションがあがりますよね。生きているものが空間にあると空気が変わる気がします。でも生花でなくても、たとえばドライフラワーにもまたひと味違った魅力があります。贈り物でもらったブーケの1輪だけでもドライにしておけば、もらった時やもらった人の記憶が一緒に残る。花をもらったときの風景がそこに留まる。そんな風にぜひ気軽に花を飾ってほしい。そしてもっともっと花を贈ってほしいと思います。

 

 

Profile
原田美貴 | SHAMROCKオーナー

東京「Matilda」のチーフデザイナーを経て、故郷広島にて「SHAMROCK」をオープン。生花やドライなどの花材を用いて季節やイベントにちなんだアレンジや空間づくり、暮らしに溶け込む植物との付き合いかたを提案。音楽や絵画など、さまざまなジャンルとのコラボレーションの経験から生まれた感性で、魅力的な花の見せかたを伝えています。
http://shamrock.jp/
Instagram:@shamrock

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※デイトワークショップスタジオは、2023年2月28日(火)を以て営業を終了いたしました。

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