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沖縄の工芸品“読谷村花織”の魅力

2019.08.24

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沖縄本島の真ん中下に位置する“読谷村”(よみたんそん)は、人口4万人という、人口が一番多い“村”として有名な地域です。今回は、サンポークリエイト沖縄店長研修会の際に訪れた“読谷村”という素敵な街の工芸品《花織》について、ご紹介させていただきます。

読谷村花織について

花織とは紋織の一種です。紋織は、平織り、斜文織り、繻子織り、からみ織りなど、糸の交差を複雑にしたり色糸を組み合わせて紋を織り出すもので、なかでも平織りの地に経糸(たていと)または緯糸(よこいと)を色糸で浮かせて織りこむ浮織りを“花織”といい、沖縄では〈はなうい〉と呼んでいます。

“読谷村花織”は、およそ600年の歴史をもつ織物。沖縄を代表する工芸品として認知されており、1976年に通商産業大臣(現:経済産業大臣)によって国の伝統的工芸品と指定されました。自然染料ならではの色合いと、繊細な紋様が組み合わさり、伝統の美を織り上げていく読谷村花織は、日本全国から世界にまで幅広く知られるようになりました。読谷村花織は、平織地に緯糸方向に紋糸が織り込まれる緯浮花織。表は地色と異なる色糸が紋を織り出し、裏には紋部の残りの遊び糸が長く浮きます。紋部は点で表現された可憐で幾何学的な柄で、鮮やかに浮き上がる3つの花柄を組み合わせて紋様が作られています。

紋様は、花そのものの形ではなく、風車を模した“風車花”(カジマヤーバナ)、お金の形の“銭花”(ジンバナ)、逆三角形の“扇花”(オージバナ)という3種類があり、それぞれに意味があります。これらを組み合わせて幾何学模様を織っていき、バラエティに富んだ色彩と独特の紋様を作り上げるのです。

|池原節子さんとの出会い

工芸センターをお訪ねした際に、花織についてお話してくださった池原節子さん。花織の知識とともに、心に響く素敵な言葉をたくさん頂きました。そのほんの一部ですがインタビュー形式でご紹介いたします。

 

ー柄が組み合わさるとこんなにも素敵になるんですね。

子孫繁栄を願う意味を込めているオージバナという紋様があって、扇型の扇のことをオージというの。あと、ガジマヤーバナとジンバナ、この基本の紋様3つがとても大切なんですよ。見習いには3つの柄をみせて「カジマ入れてごらん」と語りながら教えていくの。お客さんから「オージバナの紋様が入っているものありますか?」って聞かれたりもしますよ。それくらいこの紋様には想いがあって、そういう想いをより多くの人たちに感じてもらえたらいいなって思います。押しつけじゃなくて自然に。

 

ー想いがありますね。

粗末に織れないんですよ。“これをどのくらい織ったらいくら”とか、そんなことは考えれないです。本物の貧乏にならなければいいんですよ、心が貧しかったら本物の貧乏になってしまうけど、そうじゃない。心が豊かであればいいんです。

長い歴史をみてみれば、“買っては捨てる”になりつつある文化に逆らって、なぜ時間も労力もかかる“花織”に力を注ぐんだと反発を受けたこともありました。安く早く、ということとは真逆なことをしているって。でも先代はこの土地の文化で伝統である花織をやっていかなければって。引き継ぐことに意味があり、伝えれることがあると考えていました。それが今では伝統的工芸品として指定され、こうやって多くの方に魅力をお伝えすることができて良かったと思いますよ。

ー新しいものを取り入れるのも楽しいけど、受け継げるものの大切さってありますよね。

今の人たちに向けて日々織っています。新しいものを取り入れることも大切にしながら若い人に受け入れてもらえるように。なので見習いの織る人たちの感性も大切にしていますよ。基本的な3つの紋様は大切にしてね、と伝えながら。

花織は、表には点しか見えないけど、裏を見てその深さを知ってほしいです。実際には表しか見えないけど、見えない裏があるから表が素敵であって、花織を通して“見えないものが大切だよ”って伝えたいんです。目に見えないものの大切さ、例えばそれは“思いやり”であったり。

 

ー今日ここへ来て本当によかったです。

こういう出会いあるんですよね。おそらく何かに引き寄せられて来ているんだと思うんですよ。それが縁です。お互いの考えがずれていたら引き合ってもずれちゃうけど、今回みたいに私たちの“想い”が合っていたから、皆さん今日ここに来られたんですね。

私の好きな言葉に“過去を振り返れば未来が見える”という言葉があります。過去を振り返らない、ともよく聞きますが、過去を振り返り、良かったことも過ちもそんな自分を認めることが大切なんだと思います。過去をみつめると、それからの未来どうすればいいのか自然と分かります。過去を振り返れば未来が見えるんです。

|お話を伺ってみて

池原さんのお話を聞いて、日本文化の素晴らしさ、地域文化の素晴らしさ、その想いと作り手の気持ち、その文化のある場所の空気を吸うことの大切さ、そして改めて、文化があるところに行く事は楽しい、と知ることができました。大事に繋いでいるものがある場所には“想い”があります。

都会から離れた沖縄で、会う人会う人の優しさに触れ、心がほどけた時間となりました。何かの“想い”があって、それを形にしている人は、とてもハートが熱くて、どの言葉を聞いても温かいです。最後にいただいた“過去を振り返れば未来が見える”という言葉。過去は振り返らない、なんて言葉をよく聞きますが、そうではなく、過去を振り返って、良かったことも駄目だったことも含め自分を認めること。そして前に進む大切さを伝えたい言葉なんだと、改めて考えさせられました。

良いものを見て、良いものに触れ、持ち帰って、実際に使って。そのものの本当の良さを感じることが、ものを大切にしたい、大切に扱いたいという気持ちにさせてくれます。それは心の豊かさに繋がっているんだと思います。

|読谷村“やちむんの里”へ
読谷村といえば「やちむんの里」があることでも有名です。やちむんとは沖縄の言葉で焼き物のこと。お皿やお碗、コップなどの日常雑器のことを言います。
「やちむんの里」は、工房が20近く集まった集落です。「やちむんの里」の象徴ともいえる、赤瓦が魅力的な登窯。訪れた日は、あいにくの雨でしたが、晴天であれば赤瓦と青い空のコントラストが素敵な場所です。この登窯が「やちむんの里」の象徴である理由は見た目だけではありません。読谷村と同じく、やちむんで有名な壺屋では、1960年後半に人口の増加による登窯の煙害が指摘され、ガス窯への転換を余儀なくされました。登窯にこだわりをもつ陶工たちは読谷村に工房を移し、1980年に金城明光さん、大嶺實清さん、玉元輝政さん、山田真萬さんの4名が共同で築いたのがこの登窯「読谷山窯」。ガス窯は温度が安定しているので、きれいに焼きあがりますが、登窯は予想のつかない色やムラが出てそれが味になるという面白さがあるのです。

|おすすめのギャラリーとごはん屋さんのご紹介

・ギャラリー囍屋(きや)/大嶺亀

やちむんの里の一番奥に位置する、大嶺實清(おおみねじっせい)先生と3人の息子さんの作品があるギャラリー囍屋(きや)。やちむんといえば、厚みのある器に葉っぱや魚など自然のものを描いているイメージがありますが、ここギャラリー囍屋の器達は、伝統やモダンにとらわれすぎないシャープな形や、シンプルな色付けもの物が多くみられます。なかでも、印象的なペルシャブルーの器達。沖縄の海を思わせる、すっきりとした色味は心が落ち着くような気分にさせてくれます。器を見ていると、このお皿にはこんな料理を盛りたいとか、このカップで朝のコーヒータイムを過ごしたいとか、見ているだけでわくわくさせられました。やちむんの面白さや味わい深さは知れば知るほど夢中になるものがあります。

・まいにち食堂

囍屋のスタッフの方がおすすめしてくださった“まいにち食堂”は、大嶺先生も足を運ぶという地元に愛されている沖縄そば屋さん。ご夫婦2人で運営されており、お店には温かい空気が流れていました。

注文したのは、島でも唯一らしい「生アーサ」をトッピングした沖縄そば。「生アーサ」は噛むと潮の香りが口に広がり、魚介のあっさりとした出汁にとても合いました。この出汁が本当に美味しくて、なんでも五味と人体の仕組みを考えて設計されているそうで、人体に負担がなくて美味しいスープをと考えられています。五味とは、味の基本要素で甘味、塩味、酸味、苦味、うま味のこと。この五味の組み合わせと食感や温度で美味しいと感じられるそうです。味わえば味わうほど出汁がとにかく体に染み渡ります。

また、沖縄そばを提供する器はもちろんやちむんです。原材料の土にもこだわったやちむんの器は、中まで濃い色の土を使っているため、欠けても目立たないので“あじ”としてそのまま使っているそう。日常に馴染むやちむんの在り方というものを感じました。店内ではやちむんの里で仕入れた作家さんの器も販売されています。

 

|最後に

現在アネモネでは、伝統的工芸品“花織”の魅力を伝えたいと考え、コラボ商品開発の話が進んでいます。多くの方に手にとっていただく機会を迎えられるといいなと思っています。

読谷村で触れたお皿、美味しいご飯、お話した人、すべてに温もりがあり、心温まるひと時を過せました。是非、沖縄へ訪れる際は“読谷村”へ行かれてみてはいかがでしょうか?

 

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